老後に受け取ることのできる年金の種類
夫が死亡したのちの妻の年金について解説する前に、まず老後に受け取ることのできる年金について考えてみます。
老後に受け取ることのできる年金の種類はいくつかあります。
あくまで受給資格を満たしているという前提で、以下のような年金を受け取ることができます。
- 老齢年金:65歳になったら受け取ることのでできる年金です。
- 遺族年金:夫あるいは妻に先立たれたときに受け取ることのできる年金です。
- 中高齢寡婦加算:40歳以上の妻が、18歳到達年度末日までの子どもがいない場合、65歳まで加算額が支給されます。
- 障害年金:障害があると認定されたときに受け取ることのできる年金です。
まずはこれらの年金が、ライフステージでどのように変わるのか「共働きの会社員夫婦」の場合で、説明したいと思います。
40代の共働き会社員夫婦で、夫が二人の子を残して亡くなった場合の年金
夫が亡くなったときに受け取ることのできる年金について、「40代の共働き会社員夫婦で夫で、夫婦ともに収入が同程度ある場合の夫が二人の子を残して亡くなった場合」を例にとって説明してみましょう。
共働き夫婦で夫と妻の収入が同程度だった場合の年金の移り変わりの概算
共働き夫婦で夫と妻の収入が同程度だった場合の年金の移り変わりの概算について表にしてみました▼
以下で説明していきます。
遺族基礎年金は月6万5千円
サラリーマン夫に限らず、子供が成人していない家庭では、遺族基礎年金が毎月6万5千円受け取ることができます。
遺族基礎年金を受け取ることができるのは、国民年金に加入していることが前提です。
ただし「遺族基礎年金」を受け取ることができるのは、子供が18歳になるまでの間です。
サラリーマンの夫が死亡した場合の「遺族厚生年金」は月約7万円程度
夫が死亡した場合、妻は、自分の「遺族基礎年金」にあわせ、「遺族厚生年金」を受け取ることになります。
遺族厚生年金は、夫の死後から65歳になるまでの間、受給されます。
夫が現役時代月給約50万円だとしても、夫が死亡したのちに支給される「遺族厚生年金」は約7万円程度になります。
子供が成人するまでの間、加算が一人当たり年間約22万円
子供が18歳になるまでの間、加算金として毎月約1万8千円、年間約22万円を受け取ることができます。
ただしこの加算分を受け取ることができるのは、子供が18歳を迎える年度までです。
子供が18歳になったその年度ののちは、「中高齢寡婦加算」と遺族厚生年金を受け取ることになります。
ただしこの「中高齢寡婦加算」は遺族厚生年金についての加算なので注意しましょう。
専業主婦の場合受け取ることができる年金は1/2以下に!?
上で紹介したのは、夫、妻ともに会社員で厚生年金に加入していた場合です。
夫が元会社員などで妻が専業主婦だった世帯では、受け取れる年金額は、夫が生きているかどうかで、世帯で受け取れる年金額が大きく異なってきます。
夫が死亡したら、妻の受け取る年金が半分以下になったという話を聞かれた方も多いでしょう。
どうして半分になってしまうのか、具体的に見て行きましょう。65歳以上になって受け取ることのできる年金は2種類
65歳以上になって受け取ることのできる年金の種類について説明します。
サラリーマン夫の場合受け取ることのできる年金
65歳以上になって受け取ることのできる年金は夫がサラリーマンだった場合は二種類です。
ひとつは「老齢基礎年金」
もうひとつは「老齢厚生年金」です。
老齢厚生年金は、夫がサラリーマンだった場合に受け取ることができる年金です。
個人事業主の方などで国民年金にしか加入していなかった場合、「老齢厚生年金」は受け取ることができません。
夫が厚生年金に加入していた場合、世帯の年金は平均月々約22万円
夫が会社員や公務員などの妻は、専業主婦の場合「老齢基礎年金」を満額受け取れる場合は、月々約6万5千円、年間で約78万円け取ることができます。
夫が存命中、夫婦二人で生活をしていて二人分の年金を受け取ることができる場合は、二人分の「老齢基礎年金」が月々約13万円です。
それに加えて夫の「老齢厚生年金」等の上乗せ部分があり、「老齢厚生年金」の平均額は令和2年度で約9万2千円。よって、毎月約22万円の年金を受け取りながら生活することができるというわけです。
サラリーマン夫が死亡したのちの専業主婦妻の受け取ることのできる年金の額
この夫が存命中に受け取ることのできていた、毎月約22万円の年金は、夫が死亡したのちにどうなるでしょう?
上の図とは65歳以降に受け取ることのできる年金の額が変わってきます。
サラリーマン夫が死亡したときに専業主婦が受け取る年金:遺族厚生年金
サラリーマン夫が死亡したときに専業主婦が受け取る年金の代表的なものは、まずは遺族厚生年金。
夫が受け取っていた、あるいは受け取るはずだった老齢厚生年金のうち、報酬比例部分の4分の3に相当する額で計算され、平均的には2020年度の実績で、毎月約7万円、年間約84万円です。
子供がいれば遺族基礎年金に加算がある
これに加えて、子供がいる場合は遺族基礎年金78万円が受給できます。
さらに、子一人について約22.4万円の年金の加算があります。
(3人目からは7万5千円)
ただしこの加算があるのは、子が高校を卒業するまでの間です。
子供が卒業してから65歳までは中高齢寡婦加算
子供が高校を卒業してからは、「遺族基礎年金」ならびに「子の加算」は打ち切られます。
かわりに「遺族厚生年金」に加算して「中高齢寡婦加算」金を受け取ることになります。
上のグラフで示しているように、遺族厚生年金は平均すると年額84万円、これに中高齢寡婦加算が、年額約59万円受給できることになります。
つまり年間で約143万円、月にすると約12万円です。
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65歳以降の専業主婦だった妻が受け取る年金
上のグラフは「夫も妻も会社員」だったときの年金を表したものです。
専業主婦だった場合、65歳以降に受け取る年金は「老齢基礎年金」と「夫の受け取るはずだった老齢厚生年金の3/4」です。
つまり、84万円+78万円=162万円(年間)
月にすると約13万5千円。
毎月13万5千円の年金で暮らしていけるのでしょうか?
60歳以上の老後に必要な生活費は?
それでは老後に必要な生活費はどのくらいなのでしょう。
生命保険文化センター調べによると、60歳以上の夫婦二人の無職世帯の必要生活費は約28万円とされています。
※生命保険文化センターHPより「世帯主が60歳以上の無職世帯(2人以上の世帯)の1ヵ月間の収入と支出」(http://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/oldage/11.html)
これに対して、夫が亡くなったあとの世帯主が60歳以上の単身無職世帯の生活費は約15万円とされます。
長生きした場合に必要なお金は?
老齢基礎年金を満額受給でき、かつ夫が現役時代に月給50万円の給与があった場合でも、仮に65歳で夫に先立たれた妻が、平均余命通り90歳まで生きるとすると、
不足分1万5千円×12か月×25年=約450万円
残された奥様の生活費として450万円の生活費が足りなくなるというわけです。
75歳以上になると介護が必要になるケースが増え、女性は男性よりもその割合が多く、要介護者の約7割が女性となっています。
介護に備える費用としてさらに月々で約10~30万円が必要となり、65歳時点で2000万円の貯蓄を用意しておかなければならないということになるわけです。
これが、以前物議をかもした「老後に貯蓄として2000万円が必要」という発言に繋がるわけなんですね。
早い段階からの老後資金を蓄えるには
ここまで見て来たように、老後資金の貯えは、夫に先立たれて後悔しないよう前もって計画的に進めていくことが大切です。
ある程度の年齢になってからでは、働くことのできる場面も限られてきます。
ましてやコロナ渦の中で収入を得る方法が極端になくなってきているのが現状です。
それでは、どのようにして効率的に貯蓄をすればいいのでしょう?
貯蓄をするためには固定費を減らすのが第一歩
「コロナ渦で貯蓄にまわすだけの余裕なんてない」と言われる方も多いでしょう。
それでも、なんとか貯蓄をしておかないと、夫が死亡したのちは、そののちの生活がさらに苦しいものになっていまいます。
貯蓄をするためには固定費を減らすのが一番です。
中でも「生命保険」はマイホームに次いで大きな支出といわれます。
先ずはこの大きな固定費である保険を見直すことからはじめるのをお薦めします。
コロナにかかったら保険に入れなくなる場合もあるので注意
「いっそのこと保険をやめて貯蓄をしようか」と思う方もいらっしゃると思います。
ですが、安易に加入している保険をやめてしまうことはおすすめできません。
なぜなら、もしコロナにかかった場合、その後は保険に入れなくなる場合もあるからなのです。
というのも、コロナ自体のリスクの割合が保険会社では現時点で試算できないから。
保険はあくまでデータに基づいた試算の上で運営されています。
コロナについては、まだデータが不十分のため試算できず、そのためコロナにかかったら保険に加入できないというのが現状です。
(記事投稿:FPやすだともこ)
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老後資金の蓄え方については、できるだけ早い段階で相談すると、毎月に負担を軽くすることができます。